理奈の自宅に着いても、理奈は車を降りようとしない。
「着いたよ?」
オレは理奈にチラッと視線を向けてわざとらしく聞いた。
「まだ一緒にいたい」
それがどういう意味か分からないほどガキじゃない。
だけどオレは、理奈に手を出すつもりはまったくない。
いくら期限付きの付き合いだとしても、理奈がオレのことを本気だってことはすぐに察しがついた。
もし今オレが理奈に手を出したら、オレも理奈に気があるんだと勘違いされて後々ややこしくなる。
この世間知らずのお嬢様はどんな勘違いをするか分からない。
「もう遅いから。ご両親が心配するよ」
なるべく傷つけないように優しく言ったオレに、
「まだ大丈夫だもん」
と、口を少し尖らせて理奈は膨れっ面になる。
実にめんどくさい女だ。
いや、女と言うよりも、お子ちゃまか……。
どうせなら、あと腐れなく関係を持てる大人の女がよかった。
なんて思う自分の人格を疑いたくなる。

