ヒメ恋~Last Love~


海里といると、時が流れるのが早く感じられる。

あっという間に海に着いた気がするのに、時計を見ると、もう1時間も経過していた。


「外に出る?」


海里が手を繋いだままあたしに聞く。


「うん。砂浜、歩きたいな」


海里と一緒に手を繋いで砂浜を歩きたい。


そう言えればいいのに……。


車から降りるとすぐに、潮の香りが鼻を掠めた。


海里と2人で、こうして海に来たのはいつぶりだろう?


そんなことを思いながら歩き出そうとすると、

「美海」

とても穏やかな声で海里に呼ばれた。


「……何?」


振り返ったあたしが見たのは、優しい笑顔と、左手を差し出している海里の姿。


「手……繋ぐの?」


ドキンドキンと、心臓が大きく脈打ち始める。


「そう。イヤ?」


フッと意地悪っぽく笑う海里。


イヤなわけない。

ついさっきあたしは、海里と手を繋いで歩きたいって思ったんだから。


「どうして分かったの?」

「何が?」

「あたしが手を繋ぎたいって思ったこと」


あたしがそう答えると海里は、

「美海の考えてることくらい分かるよ。いつも一緒にいたんだから」

と笑った。