--都内某所のあるセンター街。






静けさの中に複数の足音が交わる。




そして、怒声。





そんな中、

1人の少年が息をきらして走っていた。





「…な…なんなんだよ、コレッ!」




「待ちやがれっっ!!」






知らない男の怒声が、

その少年に浴びせられる。







その少年、秀(シュウ)は、

紺色のスクールバッグを抱え、

死に物狂いで走っていた。






−数分前、




学校から下校する秀の前に

数人のヤンキー達が立ちはだかった。



この物騒なご時世、


彼らは、

秀に「金を貸せ。」と要求してきたのだ。




いわゆる“カツアゲ”。





秀は近頃、

力づくで金を奪い取られるという事件を度々耳にしていた。




その事件の被害者は、

ヒドイもので

歯を数本折られたらしい…。



そ、そんなの嫌だっ!!

歯は死守したいっ!!




そんな痛い事を思いだしてしまっては、


回れ右して逃げ出さずにはいられなかった。




しかし、今さら後悔が襲う。






素直に渡してれば、

こんなに走らなくても良かったかも…?