午後の授業はさぼり。
こうして非常階段でうだうだしてる。
「そう言えば、
これ敏弥に。」
「お土産?
最後まで言ってよ。」
「やらんで。」
「慎吾様。
そんなこと言わないで!」
慎吾が鞄から出した紙袋。
何とかいただいて、
お礼を言った。
開けてみると、
パイル地のリストバンド。
「店に入ったら、
敏弥に似合いそうやったから。」
「なんや、
あの女とか?紹介せいや。」
「いやや。
翔くんに紹介すると、
明日には翔くんの彼女になっとうやん。」
「いつ俺が、
お前の彼女に手出した?」
「翔くんの第3彼女。
俺の元カノ…。」
「何人彼女いんのさ!
…慎吾ありがとう。」
「ええねん。」
翔くんの彼女はほっといて、
こうやって、
いつも気を使ってくれる。
俺はリストバンドが手放せない。
醜い傷だらけの手首。
後は半そでにも隠れるけれど。
あの親父の女。
親父から俺の学費とか、
食費とか預かってるはずなのに、
一回ももらったことがない。
もちろん飯も作らないから。
口も利くのがいやなので、
もう、
もらう気もしない。
バイトで食費と、
学費を賄ってる俺にはありがたい。
ほんと嬉しい。

