彼氏とは毎週末にあっている。でもそんなに好きではない。
私は年上が好きなのだ。それも一回りも二回りも上のひとがいい。
小学校では隣のクラスのまったく怒らないというおじさん先生が大好きだった。中学では、生活指導の超恐い45歳の先生にかまってもらいたくて髪を茶色にした。大学では教授に好かれるために勉強に励んだ。俗に言うファザーコンプレックス、略してファザコンだ。パパなんていなくたって大丈夫と意識するあまり、パパを求めていたのだ。私の知らないパパの面影を私の周りのパパっぽいひとが作り上げ、私はそれにすがろうとしていた。
ママには知られたくない。悲しまないまでも、喜ぶはずがない。
私は総合職につき、上司のほとんどが一回りか二回り上だった。課長は、一通り仕事を覚えた私達に、仕事報告のメールを打ちなさいと命じた。同期のほとんどがいやがったが、私は嬉しかった。毎日打った。いつのまにか途絶えていたママへのメールが復活したようだったからだ。ママと違ったのはメールが必ず返ってくるということだった。どんなに短いメールにも返事が来た。
一年が経ち、規則ではなく罰則のないメール報告を続けているのは私だけになった。気付いたら私は課長を好きになっていた。メール報告の返信が素っ気ないのも、絵文字がないのもパパっぽいと痺れた。頭も薄くなりかけていた。ズボンがヨレヨレで、たまにシャツが出ているのも胸が疼いた。中年のおじさん独特の臭いがパパへの憧憬を強めた。決定的だったのが、課長が奥さんと子どもに逃げられていたことを知ったことだ。世の中って良くできていると神に感謝した。彼氏とは続いていたが、最近の私は課長命だ。でも、私のような若くてオシャレでなんでもできて、総合職の乙女は自分の気持ちより世間の目を優先してしまう。プライドが邪魔をして愛に奔走することができない。しかし、毎日のメールとたまに掛かってくる電話で、私の小さな体を盾のように守っていたプライドが少しずつ弱く脆くなっていった。