私は、看護婦をしている。夜勤もあり、入院患者も抱える大病院に勤めている。仕事を一通り覚えた私は大きな戦力とされている。と思う。毎日があっと言う間に過ぎるほど忙しい。ゆっくり過ごせる時間は、少し早く起きた朝のコーヒーを飲む時間と、お風呂につかる時間だけだ。それ以外は、バタバタバタバタと動き回る。トイレも急いで済ます。まるで映画で見た戦時中の従軍看護婦のようだ。患者さんはたしかに悪いところがあって入院してきているのだが、自分の具合に対し敏感になりすぎる。健康な私だって、お腹も痛くなるし背中に違和感を感じることもあるし貧血気味にもなる。夜中に不安になることもあれば、朝は機嫌が悪い。でも患者さんはいちいちいちいちナースコールを押し、私達がいつでも来てくれることを確認するように呼びつける。そして何回かに1回は大騒ぎをするのだ。騒ぎの感情の矛先はお医者様ではなく、私達白衣の天使だ。彼氏に振られた翌日でも、生理でも好きなドラマに間に合わなくなっても患者に呼ばれれば「どうしましたか」と笑顔で問う。私だって人間だからしんどいときもあるが、そんなときにも白衣の天使は笑顔を崩さない。泣くのは家の布団の中だ。そこにはナースコールがない。ナースコールの届かない場所では無理して笑顔を作らなくていい。笑顔がすり切れ与える愛が足りなくなると自分へのご褒美を買い、おいしいモノを食べる。本質的に癒されることはないが、明日の笑顔は作れる気がする。そして、明日になればなんとか笑えておりなんとか一週間を乗り切る。私の人生はそんな繰り返しである。