執行猶予3年


「リンデロン。」

「あ゛??」

おい爺。
いつの時代の指示だ。
普通にプリンペラン出せや。
もう、この上なく不安そうな鶴の顔。

「リンデロンでいいんですか?」

椛田さんが救ってくれ、
俺らのよく知るプリンペランが。

「ほれ。」

俺らに手渡された。

「おめえら。
看護師だべ。
てめえで打て。」

「俺やだよ。
洋ちゃん!!」

「俺無理。
鶴に針刺すなんて。」

「あ?
おめえ彼氏だべ!!」

「いいから打て!!」

椛田さんに叱咤され、
俺が打つはめに。

なんで俺が。
緊張でシリンジ(注射器)を持つ手が震える。
やばい。
消毒して…。

「おめえ。
何処に打つ気だ?
筋注だぞ。」

「…、筋注ってどこだっけ?」

「肩峰の二横指下だ。」


あの時の、
鶴の青ざめた顔は忘れられない。
まあ、
この一件で、
俺は筋注部位を忘れる事はなくなった。


「さ…、刺すぞ…。」

ぶすっと…。

痛そうだ。
俺は痛くないけど。

「点滴やっていく?
500ml?」

今にも、う●こ洩れそうな奴に、
500mlやってる余裕があるか?
でもやった。
今度は、
点滴の針を刺す。
トンボ針で。

「今度はお前やれよ。」

「俺無理。」

このチキンめ!!

またもや、
鶴の青ざめた顔が目に入る。
そんな顔するな。
緊張増しちまうだろ。
失敗して痛いのはお前だ…。



「血管ねぇ。」

「静脈注射は、
できるだろうね?」

「できるよ。」

駆血帯巻いて、
消毒して、
いざ…。

「お。」

今度はスムーズに入った。
って気を抜いた。