「リンデロン。」
「あ゛??」
おい爺。
いつの時代の指示だ。
普通にプリンペラン出せや。
もう、この上なく不安そうな鶴の顔。
「リンデロンでいいんですか?」
椛田さんが救ってくれ、
俺らのよく知るプリンペランが。
「ほれ。」
俺らに手渡された。
「おめえら。
看護師だべ。
てめえで打て。」
「俺やだよ。
洋ちゃん!!」
「俺無理。
鶴に針刺すなんて。」
「あ?
おめえ彼氏だべ!!」
「いいから打て!!」
椛田さんに叱咤され、
俺が打つはめに。
なんで俺が。
緊張でシリンジ(注射器)を持つ手が震える。
やばい。
消毒して…。
「おめえ。
何処に打つ気だ?
筋注だぞ。」
「…、筋注ってどこだっけ?」
「肩峰の二横指下だ。」
あの時の、
鶴の青ざめた顔は忘れられない。
まあ、
この一件で、
俺は筋注部位を忘れる事はなくなった。
「さ…、刺すぞ…。」
ぶすっと…。
痛そうだ。
俺は痛くないけど。
「点滴やっていく?
500ml?」
今にも、う●こ洩れそうな奴に、
500mlやってる余裕があるか?
でもやった。
今度は、
点滴の針を刺す。
トンボ針で。
「今度はお前やれよ。」
「俺無理。」
このチキンめ!!
またもや、
鶴の青ざめた顔が目に入る。
そんな顔するな。
緊張増しちまうだろ。
失敗して痛いのはお前だ…。
「血管ねぇ。」
「静脈注射は、
できるだろうね?」
「できるよ。」
駆血帯巻いて、
消毒して、
いざ…。
「お。」
今度はスムーズに入った。
って気を抜いた。

