車いすに座ってる、
爺ちゃんが見えた。
微動だにしない。
「ほら、
ベッドに乗せるよ!」
俺は、
とりあえずベッドに乗せた。
触った感触は、
温かな柔らかい人間の感触じゃない。
死んでる?
「吉川先生呼んだから!!」
「どきな!!!」
ぁ・・・。
急変時のあのなんとも言えない緊迫感。
俺は、
一度もちゃんと、
急変の対応ができていない。
「患者は!」
間もなくして、
吉川先生は来た。
椛田さんと、
先生は患者の処置をしていく。
俺は又、
目の前で繰り広げられる光景を、
見てるしかなかった。
これ、
地味に結構落ち込むんだよね。
ため息。
結局。
その患者は亡くなった。
ご飯を食べようとして、
車いすに座って、
ご飯が運ばれてくる。
その僅かな間に、
一人。
息を引き取ったのだろう。
誰にも看取られることもなく。
家族もいない、
その患者の荷物を整理していた。
床頭台の中。
洋服、日用品を箱に詰めていた。
その奥。
出てきたのは、
古びた木箱。
大きなのと、
少し小さい箱。
裏には、
滲んだ文字で、
年月日と、
読めない名前が書いてあった。
骨壷だった。

