男が悲鳴を上げた。
驚いた運転手が車を急停車。

振り向き見た光景に、
驚きながらも、
助手席の男が手を伸ばしてきた。

「この野郎。
何しすんだ!」

止まった車から、
刺されてのた打ち回る男を踏みつけて、
車外へ出た。

後ろで俺を罵る声が聞こえる。
追いかけてくる音が聞こえる。

暗い闇の中、
これほど音が怖いと思ったことはない。
夢中だった。
闇の中光を探して、
たった一本の知らない道を、
無我夢中で走った。


でも光は見えなかった。


どうやら、
奈落の底に迷い込んだらしい。

もう、
戻れないと思った。





音がなくなって、
どれだけ歩いたか、
公衆トイレがあった。

以外と家から近くの駅だった。
人気はなく、
一人ぼっちのような気分。

中に入って、
明かりに照らし、
自分の姿を見た。
還り血が気持ち悪いくらい付いていた。

とにかく、
手を洗った。
汚くて。

独りになりたくなかった。
でも、
こんなこと話したくなかった。


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Re:
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具合悪いんだ。
ちょっと、だけ。

end
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鶴に来てほしくって、
そう打った。

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Re:RE:
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病院行ったら?

end
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そりゃそうだ。

もう怖いとか、
悔しいとか、
悲しいとかなかった。

信じる者は騙される。
誰も救っちゃくれない。
俺の教訓になった。