その日、
仕事に行くしかなかった。

すぐに大家に電話して、
家賃の振込を10日のばしてもらった。
これ以上待てないって言われた。

明日から、
現場みっちり入れれば、
払える。
オカンの3万は振り込んだし。

米ももう僅か。
小さいおにぎり1つと、
自家製麦茶をペットボトルに詰めて、
仕事に行った。
現場の時は、
タバコと1Lパック100円の水でしのいでた。
タバコを吸ってれば、
食べなくて済む。


悲劇はそれからだった。
お盆中事務所は休みだけれど、
その期間の予定を送れば、
その間も仕事ができるはずだった。

しかし、
仕事は回ってこなかった。

つまりは、
珈琲のバイト以外、
仕事がない。
その給料日は来月。

鶴たちに頼るわけにはいかない。
あいつらも、
いっぱいいっぱいなのは知ってる。
まして、親になど…。


俺は、
雅美に電話した。
彼女は高校時代の友人。
此方に出てきてから何度かあったことがる。
気の合う友達で、
今は東京で大手被服メーカーで、
デザイナーをしている。


夜。
さっそく電話した。

『一愛つん。
どうしたの~?』

「悪いんだけど、
金貸してくんねぇ?」

『いいよ~。』


仕事したばったりの雅美も、
金はなかったろうに、
貸してくれた。

5万借りて、
すぐに振り込んだ。

でも、お盆中仕事をしていなかった俺。
そのあとの金が続かなかった。

そしてとうとう、
金融機関の借金に手を出した。


もう、
この頃には頭の99%は金の事しかなかった。