執行猶予3年



「松永さんって21歳なんだ。」


この職場は、
まだ、
できる過程で、
今までにないほど多くの職種が入ってる。
トビも、
いろんなチーム入ってるし。
そして、
少し違うのが、
男しかいないのはもちろん。
みんな若い。
自分とそう変わらない年だ。

ピアスに、
タトゥと呼びがたい刺青を入れた男たち。

そしてこの職長。
170cm位、
俺と同じくらいか。
少し小太りで、
全然かっこよくないんだけど、
どうやら自分の事を格好いいと思ってるらしい。


だいたいペアを組んで、
部屋を回るんだけれど、
その日は、
前の職場で一緒だった阪野さんが組んだ。

「また一緒だな。」

「よろしくお願いします。」

「お前は、
年も同じだから、
原と回れ。」

「はい。」

身長の高い体格のいい人と回ることになった。

「よろしく。」

まぁ、
感じは良さそうだ。
ペアを組む人間が、
感じ悪かったら最悪だ。


「とりあえず、
これ全部、14階に持ってけ。」

小さな麻袋。
持ったら、
重たい…。
何だこれ…?

「あ、ナット。
一袋15キロくらいあるから。」

馬鹿たれ。
見た感じ10袋はあんべ!
エレベーター点検でとまってるこの日に!!
しかもこれ…。

「あぁ、なんか、
トビのほうが使うって。」


季節は夏。
7月の半ばだった。
暑いさなか、運ぶはめに。

「俺、持ってくから、
松永さん先行ってていいよ。」

なんていい奴だ。
原はなかなかいい奴だった。

悪いので袋を2つ持って、
先に14階に上がった。
担当するフロアに行くと、
なぜか小太りの職長がいた。

「あー、
そんなの持たなくていいのに。
原にやらせとけばいいんだよ。」

少しむっとした。

「仕事なんで。」

「ねえ、これ終わったら、
なんか食べに行かない?」

「この後も仕事なんで。」

「何してるの?」

「パチンコ屋でのコーヒー売り。」

「今日休みなよ。
バイトだい出してやるし。」


こいつ、
上司じゃなきゃぶっ飛ばしてる。
まじうぜぇ。