「今日は仕上げの仕事だから、
絨毯あるところ全部掃除機かけてきて。」
全長1キロくらいある鉄道の博物館。
見渡す限り絨毯。
しかもドラムと呼ばれる、
業務用の延長コード5キロ。
業務用の掃除機もでかくて無駄に重い。
「半べそかきながら、
現場に来たのはお前だけだ。」
職長の阪野さんに笑われた。
おっさんだけど、
悪い人ではなさそうだ。
現場には、
若い人がいっぱい居て、
中でも、
小林ってやつが結構かっこよかった。
そして、
ほんとに女がいない。
現場には、
ガラス屋や、
内装業、タイル屋、
とび職など、
多くの職種が入ってた。
工事現場などでよく見るプレハブ小屋が休憩所。
もちろん男女混合。
とりあえず、
絨毯に掃除機をかける。
「よく女の子が、
こんな職場来たな。」
「…まあ、生活かかってるんで。」
職長は笑って言ってしまったが、
そばにいたのは、
イケメン小林。
「生活かかってるって、
俺らもだよ。」
隣の若い男と話してるのは、
これ見よがしな厭味ばっか。
イケメン小林から、
厭味小林に降格。
「どうせ続かねえだろ。」
くそ。
てめえもバイトだろ!!
って思ったけど、
イヤミ小林は、
本社の人間だった。
1年の研修ののちに、
本社に戻る予定だ。
糞この野郎。
腹の中で毒づいても、
仕方ない。
これが終われば1万円もらえる。
今日が1万円。
そう言いきかせてやった。

