執行猶予3年




「今日は仕上げの仕事だから、
絨毯あるところ全部掃除機かけてきて。」

全長1キロくらいある鉄道の博物館。
見渡す限り絨毯。
しかもドラムと呼ばれる、
業務用の延長コード5キロ。
業務用の掃除機もでかくて無駄に重い。

「半べそかきながら、
現場に来たのはお前だけだ。」

職長の阪野さんに笑われた。
おっさんだけど、
悪い人ではなさそうだ。
現場には、
若い人がいっぱい居て、
中でも、
小林ってやつが結構かっこよかった。

そして、
ほんとに女がいない。

現場には、
ガラス屋や、
内装業、タイル屋、
とび職など、
多くの職種が入ってた。
工事現場などでよく見るプレハブ小屋が休憩所。
もちろん男女混合。

とりあえず、
絨毯に掃除機をかける。

「よく女の子が、
こんな職場来たな。」

「…まあ、生活かかってるんで。」

職長は笑って言ってしまったが、
そばにいたのは、
イケメン小林。

「生活かかってるって、
俺らもだよ。」

隣の若い男と話してるのは、
これ見よがしな厭味ばっか。

イケメン小林から、
厭味小林に降格。


「どうせ続かねえだろ。」

くそ。
てめえもバイトだろ!!
って思ったけど、
イヤミ小林は、
本社の人間だった。
1年の研修ののちに、
本社に戻る予定だ。

糞この野郎。
腹の中で毒づいても、
仕方ない。
これが終われば1万円もらえる。
今日が1万円。
そう言いきかせてやった。