事件っていうのは、
その電話の何日後だろう。
とにかく、
8月4日。
蒸し暑かった記憶がある。
「なぁ。
聞いて。金井。」
「何?」
「八巻と連絡とれない。」
「何お前も?」
「金井も?」
「飲みに誘っても、
メール、シカトされてるんだよな。」
「いや、さっき電話したんだけど、
電源入ってないし。」
「原君に聞いてみる?
職種同じだし、
下手したら同じ現場かもよ?」
「あ、それいい。」
すぐ電話したら、
原君は知らないらしかった。
少しがっかりしてると、
ほどなくして、
原君から電話が来た。
『なんか、現場にも来てないみたいだけど。
職長が電話してもつながんないって。
無断欠勤して、
出てきたら、
大変だよな。』
原君は、
笑ってたけど。
俺と金井は笑えなかった。
顔を見合わせて、
最近感じていた違和感が、
大きな不安へと変ったんだから。
急いで、
車に乗って、
八巻の家に言った。
八巻の家に着いたのに、
なかなか二人して、
車から降りれなかった。
蒸し暑い車内。
蒸し暑い風。
何もかもが不快感。
何もかもが不安要素。
ほんの数分の葛藤。
やっと、車から降りて、
玄関へ向かった。

