執行猶予3年




忙しい。

「輸血するって言ってなかった?」

「え…?
はい。今から。」

「先にやって、
空いた時間で、
ケアすればいいでしょ?」

「…はい。」


輸血の保冷庫を肩にかけて、
1Fの検査科まで走る。

以前にエレベーターは使ってはいけないと言われた。
3Fの階段で、
小田Drと出会った。

「何してんの?
ゼーゼー言って。」

明るい茶髪に、
Gパン履いて、
サンダル履きの、
チャラそうな先生。


「…検査科に輸血バック取りに。」

「エレベーター使えばいいじゃんか。」

「え~と…。
いいんです。
動いた方が痩せるんで。」

「ふーん。
輸血チェックするだろう?
おれも1階に用事あるから、
チェックしてやるよ。」

「ありがとうございます。」


輸血をする際、
伝票と輸血の内容があってるかチェックする。
まずは検査科とNsで一回。
NsとDrで二回。
Ns同士で三回。


検査科で確認し、
輸血バックを受け取った。
外で待機してた小田Drと再チェックしてると、
小田Drが不意に口を開いた。

「お前、いじめられてんのか?」

「そんなことないですよ!!
ほんと。大丈夫ですから!」

「…そうか?」


なんだか、
そこに居づらくて、
小田Drに礼を言って、
走って病棟に帰った。


虐められてなんかない。
そんな惨めなことされるわけがない。

中学時代の嫌な記憶がよみがえる。
違う。
虐めじゃない。
俺が虐められるはずない。



階段を駆け上がった。
見たくもない同僚の顔を見るために。