何があったわけじゃない。
ただ毎回ライブを見に行っていただけ。
大好きな彼氏が目の前で、
やっと念願かなってステージに立っている。
でも自分の存在は内緒。
つながりを知られてはいけない。
麺たちの周りには女の子。
純粋ファンに加え、
前述したような子が混ざってる。
ファンからのメール。
知らない子が自分の彼氏とメールしてるけど、
ソレはファン。
自分は陰で支えるんだ。
ソレは覚悟していたと思う。
でもいざ、
その場面に直面すると、
以外に自分が耐えきれない事に気づく。
それでも葛藤を繰り返して耐えてた。
わだかまってわだかまって、
ついに崩壊したのが、
5月の末あたり。
早いように思えるけど、
ひと月も悩んでみれば分かる。
誰だって耐えられない。
よく頑張った方だ。
ライブの後。
洋ちゃんと、
その弟と鶴と俺で飲んでいた時だ。
隣にいる鶴の様子がおかしい。
俺は、
鶴を外に連れだした。
「鶴の事よろしく。
ごめん。」
洋ちゃんにそう託された。
如何わしい店が立ち並ぶ、
路地裏の駐車場。
ソコに腰を下ろし、
鶴は泣いていた。
黙って見てるだけしかない、
それが辛いのか。
決意した自分の心の揺れが悔しいのか。
ソレは本人しか分からないけど、
涙があふれたのだと思う。
俺はその時何を言ったのかは覚えてない。
記憶はあいまいだけど、
感情は覚えてる。
健気な鶴が、
可哀そうで、
でも仕方なくって、
複雑だった。
お互いに頑張りどきだった。
いや、
二人とも頑張ってたけど。
何かが違い始めた。
何なのかは、
俺には分からない。
でも、
今までとは、
変わり始めたんだ。

