「初めまして。
松永です。
分からない事が多くて、
ご迷惑をおかけするとは思いますが、
よろしくお願いします…。」
看護師が並ぶナースステーション。
一面を残しガラス張りの開けたところ。
7階内科。
入院ベッド40床。
此処が今日から俺が働く病棟。
「はい。
皆さん。気を引き締め、
これから、
”病院の為に”頑張ってください。」
は?
って、思ったけど、
黙ることにした。
少しは、社会人としての自覚っちゅうもんは、
あるんです。
「あ。貴方でしょ!
今朝、男に間違えられたの!」
「あ、はぁ。」
「あたしも間違えたもの。」
けらけら笑いながら、
小柄な目つきのきつい看護師が近付いてきた。
「ホントに、
声低いわね。」
悪かったな。
「いくつ?」
「21です。」
「見えなーい!!」
そうなんです。
俺、松永一愛。
正真正銘の女なんです。
少し老け顔で、
よく男に間違えられます。
言葉づかいは、
男の振りでもなく、
ましてや性同一性障害でもなく、
”地”なんです。
服装も、髪形も、それなりに。
気にしないで下さい。
にしても。
この人、結構…。
「あたしの方が若く見える。」
いや、かなり失礼。
まぁ、好きになれないタイプ。

