夏と風鈴




家に着くと アパートの前には 男がいた



いちど来た事があるけど 名前まで思い出せない



「どうぞ」


男は慣れたように 部屋に入る


アタシはカーテンを開け 窓をあけ 痛いぐらい眩しい夏の光を部屋に入れた


ミーン
ミーン
ミーン


いつものように蝉達が こぞって鳴く



男は 全裸で布団に横たわり “乗って”と指図する


アタシは服も脱がず 男の上に 乗りかかった



ギシギシと軋むアパートと 虎次郎のマンションとのギャップに 滑稽さを感じた



「じゃあ」


排泄を済ませた男は 部屋を出て行った



アタシは 布団にうつ伏せになり 煙草に火を点けた

太陽の眩しさと 真っ青な空が 妙に痛かった


チリーン チリーン


どこからか風鈴の音色が聞こえてきた


その涼しげな音色を聞きながら アタシは眠った