それは古い知人からの電話だった。
彼女の名前は佐倉アキコ。
学生時代から突拍子の無い思いつきだけは右に出る人間がいなかったと記憶している。
高校を卒業してからずっと会ってないし、今何をしているのかも知らない。
そんな彼女が”昨日ぶり!!”みたいなノリで携帯に電話をかけてきた。
しかしその内容といったら…。

「いんやぁほんと悪いんだけどさぁ~お願いっ頼むわ!!」
「だから!」
「あんたおもしろいから絶対大丈夫だって!」
「人の話聞けやコラ!」
さっきから話が一方通行で、その上どういうわけだか私がその計画に乗る方向で話が進められている。
「んも~だーからぁっ!!なんてゆうの、サイドビジネス?マキが”携帯小説用のサイト作ったら儲かる”っいうからさぁ」
「いや、だからなんでそこで私に声がかかるの?そもそも小説なんか書いた事な」
「こういうサイトを広めるには客寄せパンダ的な作品が一個あるとPRしやすいんだってマキが言ってたからぁ!色んなサイトあるけど、どこも匿名で作家雇ったりして客寄せてるらしいよぉ?」
「…いやそんな事情知らんしどーでもいいし」
「でもアタシお金無いじゃん?だから面白そうな人に文章書いてもらおうとおもって!タダで!」
「だから何で小説書いた事無い私に連絡してくるんだよ!しかもタダ働きかよ!?」
「たのむよルイコぉ~!!」
「だから!小説なんて書き方知らんつーの!!」
「だいじょーぶだいじょーぶ!携帯小説なんて小学生でも書けるらしいから!てかケイタイ小説を”小説”っていうと小説家が激怒みたいな低文章レベル?簡単簡単!内容はテキトーに未成年のラブストーリーで設定が生き別れの兄妹とか病気とか両親の離婚とかレイプとか中絶とか失踪とか交通事故とか、あ、最後は相手の男死ねばいいから!人物描写も2人だけの世界で読者は満足するみたいな!」
「…なんか、何も言えないよ」