何か柔らかい物に飛び乗った瞬間、それが三匹のネズミ達じゃない事に気が付いたベルは、同時に聞こえてきた声に驚いて飛び退いた。そこには同じくらいの年ごろのブタがジタバタと暴れていた。
『食べないで!食べないで!たすけてよぉ!』
ベルは慌てて言った。
『ごめんごめん。勘違いなんだ。食べたりしないから!大丈夫だから』
ベルの声に彼は暴れるのをやめて、起き上がった。
『君は狼じゃないよね?』
『当たり前だよ』
『蛇でもないよね?』
『ちがうよ』
『もしかして…人間?』
『違うよ、うさぎだよ』
怯えながら聞いてくる彼に呆れながらベルは答えた。
『それはよかった。ここは僕の隠れ場だから早くどこかに行ってくれよ』
ブタは笑いながらそう言って花畑に寝転んだ。
『ねぇ君は…月への生き方なんて知らないよね?』
『僕はいないんだ。いないから質問したら駄目だよ。いないんだから答えれるわけないだろ』
ブタは不機嫌に言った。
『そっか、ごめん』
『いないのに謝るなんておかしいだろ!』
ブタはもっと不機嫌になっていた。ベルは何も言わないのが一番だと思いながら月に向かって歩き始めると後ろから声が聞こえてきた。