『もし森の中から良い匂いがしたら、見に行って木の実なら持ち帰らないといけないだろ?もし、嫌な臭いなら悪い獣がいるかもしれないだろ?逃げないといけないわけだ。わかる?』
父さんと森を歩いていた時、父さんは色々な話をベルにしていた。ベルにとって何でも理解できたわけじゃないけど、ベルは話をする事が好きだった。
ある時、父さんが言った。
『ベルの大切なモノはなんだい?』
『母さんがくれた鈴かな』
『どうしてだい?』
『わかんない。でも大切』
『なくなったら?』
『いやだ』
ベルがそう答えると父さんは笑った。
『大事なモノと大切なモノの違いを知らないといけないな。本当に大切なモノはね、決して無くしたらいけないし、ないと生きていけないモノなんだ』
その時、ベルには話の意味が分からなかった。それでも両親が死んだ時にベルは気が付いた。
ベルにとって何より大切なモノが何だったか。だからベルは月に向かっているのです。大切なモノを取り戻したいから…
家族の時間を過ごしたいから…

ベルは立ち上がり歩きだしました。鈴は無くなっても代わりがきくから…
ベルは三匹を追わず、壁添いに前に進む事にした。