ひらり

  ひらりと、




風花(かざばな)が





宵の風に

 舞い堕ちる





 ふらり

   ふらりと、





宵闇の

 風の中に

  通り過ぎて

     …逝った。






此処は…

首都圏の外れ
温暖な気候の土地、

そのせいか、

日中は明るい陽射しの中で
少し異種な言葉が飛び交い入り交じりながら、

雑多な街に色とりどりな人種が行き交う、

その街の中でふと、

足を止めて佇めば、

潮風が頬を掠めて
鼻腔を擽る様に
吹き抜け、

余韻棚引かせて香る街。



相反して、

夜は
今でこそ少しだけ
穏やかになったが、

一昔前は色鮮やかなネオンの下で
混沌とした人間の様々な欲望が入り混じる街だった。



然し、

荒廃した混沌では無く
良いも悪くも
共存と繁栄を歩んで来た時代と言えよう。


光があれば、
影は必然。


今ではすっかり整備され、

良い子の様な夜の街灯。

その下に佇めば…


夜の潮風が頬を掠め、

風が…

自身の髪を掻き乱しながら心の奥の記憶を
ざわめき立たした。


風が…

鼻腔の中を擽る様に
感情を擽りながら、

通り過ぎて行く。


あれは…

そう、あれは

この温暖な街に滅多に降らない風花が、

舞い散る寒い夜。



…生き延びて。

と、


願った人が居る。



行きずりの男(ひと)だが、

願わずにいられなかった。



あれは…

まだ、

二十歳を少し過ぎた時の事だった。