母さんはただ泣いていた。小さなすすり泣き。声にならない嗚咽。

眠れない夜、一人ベットで泣いていたのはあたしなのに、人前で泣かずにいられなかったのは母さん。

二人の姿が見える。
でも何も見えない。

あたしは最後まで黙ったまま。

水槽の中から眺めるように、ぼんやりと、外の世界を眺めていただけ。

父さんと母さんの背中の後に、校長室を出た。

授業中で静まり返った廊下を歩いた。

冷たい階段を下りた。

校門を抜けた。