霞んだ視界に相羽の大きな手が映る


「・・・やめてよ。触んないで。」


泣いてる自分の精一杯の意地。


「あ、唯佳だ。あたし、帰る」


ジャージの袖で濡れた頬を拭って

あたしは校門へ向かった。

ほんとは唯佳なんていなかったのに。


・・・でも、逃げ出したかった。


   1人にして欲しかった・・・


吉野先輩が帰って行った道を見つめる。

ずーっと前に居なくなってしまった先輩の姿は、
あるはずがなくて。


それでもあたしは、先輩の姿を目で探した