そんな朧を見て隆雅も釣られるようにして微笑む。



まだ出逢って間もないのに、彼女と一緒にいるだけで気持ちが和らぐような気がした。



だから…彼女のことをもっと知りたくなる。



「そなたは…どこの家の者なんだ?」



隆雅の問いに、朧は表情を曇らせた。



それを見て隆雅は聞かなければよかったと後悔した。



「あ…いや…別に答えたくなければ答えなくていいから…」


「…申し訳ございません…。そればかりはわたくしの口からは言えません…」



さっきまでの和やかな雰囲気から気まずい雰囲気になった。



足元にいる小夜は交互に二人を見ている。



何とか違う話題を考え、結局思い浮かんだのは…



「…そういえば、ここ京で物の怪がでるらしい」


「物の怪…ですか?」



物の怪の話…。



…元々、女がどんな話を好きなのか分からない。



物の怪の話を出したとしても、目の前の彼女は興味なんてないだろう。



隆雅はまた失敗したと心の中で溜め息をついた。



だが朧から意外な言葉が返ってきた。