「桜井?熱でもあるのか?」
橘くんはふいに、私のおでこに手のひらを当てた。
「ひゃっ…」
つい、変な声を出してしまった。
「熱はないみたいだね」
「あっ…うんっ…何でもないよっ…ごめんねっ」
私、心配かけてばっかだ…。
「俺さ…」
えっ?なに…もしかしてもう、勉強会したくないのかな…
もし、そうだったら嫌だっっ…
「あっ…もう疲れちゃった?今日は終わりにしとこっかぁー」
私は早口で橘くんが何も言えないように、
今日で終わりにしようなんて言われないように…
テキパキと帰る準備をした。
鞄を持って教室を出ようとした瞬間…
「待てよ…」
橘くんの声がして…
そのまま橘くんの腕の中に抱き寄せられた。
「橘…くんっ…?」
「俺から…離れるなよ…」
「えっ…橘くん…どういう意味…な……ンッ」
橘くんに正面を向かされ、そのまま、唇を手で塞がれた。
「もう、それ以上なにも言うなよ…」
「…ふぉ…ふ…ひ…ひぇ」
柔らかくて大きな手のひらで塞がれた私の口は、ちゃんと喋れない。
その勢いで、私は橘くんの腕を両手で掴んだ。
息苦しくて、涙が出そうになる。
