ちょっぴりうつむいたままのシルヴァイラを見て、オレは、何だかいとしくて胸がいっぱいになった。


「シル、愛してるよ」

「……」


ちらりと金の瞳をオレに投げて。

シルヴィは、目を少しだけ細めて、ほんの少し、困ったように微笑んだ。



わかってる。

シルのこのほんのわずかな微笑みは、普通の人の爆笑の状態なんだ。

だってほら、こんなにシルの喜びがなみなみと伝わってくるんだから。




オレたちは無言で、ゆっくり馬を歩かせた。

馬の歩くカポカポいう音だけが響く時間は、とても心地よかった。





オレたち二人がこれから目にし、耳にしていく人々の苦しみはハンパじゃないだろう。

相手の苦しみを自分の心で感じることで、苦しむことも多々あるだろう。


だが、これは逆にオレたちだからできることだ。


だれかの苦しみをひとつ理解し吸収することで、オレたちはまたひとまわり大きくなれる。



きっと――