「本音を言うと、わたしも二人についていきたいくらいなんだよ」


レイジュラの声はやさしかった。



「――え?」


「これまでただがむしゃらに道を突き進んできて……

ここまで来たのはいいけどね。


今、これからの自分の人生をどう生きたいか、改めて考えたときに、足元をすくわれたような気になってね。

わたしは何を望んでここまで来たんだろうかって。


自由に生きるシレンたちがすっかりうらやましくなったよ」


「……レイジュラ。

何言ってんだよ」


オレは心底たまげて言った。


「この国にはあんたみたいな優秀な人材が必要だろ。

あんたは特別な人間なんだ。

あんたがこの国を動かさないで、誰がやるんだよ」


「……」



レイジュラは少し寂しげに肩をすくめて微笑むと、もう何も言わなかった。






やがて、とうとう馬にまたがって進みだしたオレたちは。

丘の上のじいさんとレイジュラの姿が少しずつ小さくなるのを、名残惜しく何度も何度も振り返って見ていた。


とっぷりと日が暮れて、二人の姿が闇にかき消えても、まだ何度も振り返って見ていた。