上着をママに渡すと、またオモチャ片手にママに話しかけた。

ママは、まるで『心ここにあらず』という雰囲気なのだが、女の子は、健気に話し続けている。

しばらく、そんな二人の様子を見ていた私は、その小さな女の子が、懸命にママの関心を引こうとしながらも、意識しているのかいないのかは不明だが、ママに迷惑をかけないように、自分の事は自分でやろうとする強い意志があるように感じた。

というのも、揺れる車内、あの年頃の子供を持つ母親ならば、転ばないように、子供の手を取り、ドアの脇に立たせながらも、ドアに手を挟まぬよう、景色を見て歓喜すれば、一緒に笑ってみたりと、その目は始終子供に向くように思うのだが、そのママは、その間、ほとんど子供の顔を見ていなかったからだ。