「それでこいつは誰やねん?
こいつって言うかこいつら。
バックの演奏もかなりレベル高いし
メジャー級や。

それにこれ生のライブを録音した音やろ。
それも音響のあまりよくない
たぶん小さなライブハウスかどっかで
隠し撮りした音」

「ああ、俺も同じ事思った。
でもどこのバンドのライブ音源かは
今だにわからない。

これだけの声だ。
絶対に話題になるはずなのに
そうじゃないって事は
メジャーではやってないって事だ、多分」


ケンゴは俺の推測に頷いて賛同すると
ハタと何かに気付いた表情を見せた。


「じゃあそもそもお前は
どうやってこの音を知ったんや?」

「本当に偶然としか
言いようがないんだけど
見つけたのは約二年前の中三の秋。

よく行く音楽サイトがあって
そこの掲示板にアップされてたんだんだ。

件名も名前も何もなくて
ただ音楽ファイルの
アドレスだけ載ってて
普通ならクリックしないだろ?
めちゃめちゃ怪しいし。

でも何故か俺はボタンを押してDLしてた。
んで曲聞いて
後になって誰がアップしたんだか
気になって掲示板調べたけど
書き込み事態もう消去されてた」

「運命的やな」

「んなたいそうなもんじゃ
ないと思うけど」


力なく返事をして
少し暗くなった気分を変える為に
ポケットからタバコを取り出し
ケンゴにも勧める。

そしてお互い自分のライターで火をつけ
ゆっくりと煙を吐いた。


「そういえば、この曲の歌詞
全部英語やろ。
ってことは日本のバンドやない?」

「いや、英語の発音だけに注意して
聞けばわかると思うけど
確かに上手いけど
ネイティブの発音じゃない……と思う。
多分。

それにこのファイルには
タイトルが付けられてて。
“Club Code”って」

「は?Club Code!?」


驚いたらタバコの煙がむせたらしく
何回か咳をしてからケンゴは俺を振り返る。

当時の俺と同じ驚愕の表情。