そいつの顔を見て演奏を続ける俺。
視界に映すのはたった一人だけ。
目はそらさない。


やがてそれに気付いたパンク少年。
さらにソワソワ落ち着かない様子で
周りをキョロキョロと見回す。


オイオイちげぇよ
お前だよ。


サビの盛り上がりの直前
俺は挑発するように口元を上げ
更に挑戦的な視線を送った。

するとそいつも
対抗するように俺を睨み付けてきて。
全く生意気な新入生だ。


そして曲のピーク時。
彼に向かって右手をかかげて見せて
人差し指を真っ直ぐに天井にむけた。


――さあ、こいよって思いを込めて。

我慢なんて無意味じゃん。
座って縮こまってても、面白くねーだろ?

自分のやりたいようにして
音楽を楽しむんだ。


まるで正面から衝撃派を
喰らったかのように。

俺を見て我慢できなくなったそいつは
その場で立ち上がって拳をかかげ
雄叫びのような奇声を発した。