大通りの赤信号を待ってる間
乱れた息を整えながら
ポケットの携帯を取り出し
再度アキに電話をかける。


……ダメだ。
やっぱり電源すら入ってない。


その後ポケットをさらに探り
くしゃくしゃに丸まった紙を取り出した。


もしかしたら
“アイツ”なら何が知ってるかもと

この前もらった
ユウキの電話番号の書かれた紙を開き
そこに書かれた数字を打ち込んでいく。


通話ボタンを押そうとして少し考えた後
――気が変わって
そのまま携帯をしまい込んだ。


……やっぱり
ユウキには頼りたくない。


その後ちょうど信号が青に変わり
俺は気持ちを切り替えるように
誰よりも早く横断歩道に飛び出した。


――やがて目的のマンションに着き
ひとけのないエントランスを走り抜け
アキの部屋の前に到着する。


ドアの前に手を付いて咳をしながら
勢いに任せてインターフォンを数回叩くと
無機質な機械音が数回響いた後は
いやになるほどの静寂。


軽く舌打ちが漏れ
もう一度インターフォンを鳴らしながら
ドアノブに手をかけた。


――やっぱ、開かねーか。


そして次は
旗から見たら明らかに不振人物だけど
気にしてらんねーし

冷たいドアに耳を近づけて
中から音がしないか確かめてみた。


部屋の中から物音一つ聞こえてこないのは
中にいないか
それか動ける状態じゃないか。


嫌な予感が拭えないまま
薄暗い通路を急いで歩き
アキの両隣の家の
インターフォンを鳴らした。

この三日の間に
彼女の姿を見たか聞きたかったのと
最悪隣の家のベランダから
アキの部屋に飛びうつれないかと思って。


しかしそんな俺の期待は外れ
両隣共留守のようで
この八方塞がりの状態に
思わず頭を抱えてその場に座り込んだ。


――どうする?

鍵こじ開けるか
ってあぁそっか、管理人に事情話して
鍵開けてもらうとか?

つーかそもそも管理人ってどこにいんだ?


こんな非常事態なのに
焦りまくっていい考えも浮かばない
そんな役に立たない自分が嫌になる。