驚いて身体を上げると
緩く巻かれたダークブラウンの長い髪を
手ぐしで整えながら
開いたカーテンのそばに立つ女。

俺は少し安心して
そっちに向かい合う形でベッドに腰掛けた。


「ユリ、何やってんだお前」


ユリはスカートのプリーツを直しながら
少し眠そうな顔で俺の前まで歩いて来た。


「何って寝てたの。
昨日あんまり寝てなくて。
だから学校ついた足でここきて
それからずーっと寝てたの」

「お前何しに学校来てんだよ」

「リョウにだけはその言葉
言われたくないわね。
ところでリョウは?
いつもサボるときは部室か
屋上じゃなかった?」

「今日はサボりじゃねーよ。
マジで具合わりいの。
頭痛くて薬もらいきたのにあの女いねーし」


ふて腐れたように
両手を後ろに投げ出すと
ユリは驚いた顔を見せた後
ゆっくりと手を俺の方に伸ばした。

ひんやりとした細い指が額に触れて
ほのかに痛みが和らいだ気がした。


「この前無茶して雨に濡れたから
風邪でもひいたんじゃないの?
でも熱はないみたいね」


すぐにその手が離され
心なしか名残惜しい気がして
彼女に視線を送ると

ユリは机の引き出しを開け
鍵の束を手にすると
そのまま薬品棚の方に向かう。