そうはき捨てた後、
呆然とその場に立つアキを残し
俺はマンションに背を向けた。


人通りの全くない道で
一歩一歩アスファルトに靴底を
踏み鳴らす度に侵食されていく。

俺の心を蝕むマイナスの感情に。

嫉妬?
後悔?
羨望?
諦め?

自分でもよくわからない。


ユウキの事
ケイの事
アキの過去

色々な情報が頭に入りすぎて
何をどう処理すればいいのか
完璧にお手上げ状態だ。


ふと夜空を見上げると
最近にしては珍しい満点の星空と三日月。
何故か痛みとなって感じるその景色。

さっきまでは空を見る余裕さえ
なかった自分を実感する。


もうすぐ梅雨が始まるから
こんな空は見納めかもと想いながら
しばらく立ち止まって空を見続けた。


――そうして再び歩き出した足元に
視線を落としながら悟った。


どんなに想っても
どんなに願っても

この世の中には
手に入らないものがあるんだ
って事を――。