「とにかくだ
これまで色々あったけど
今日が本当の意味でのスタートだ。

目指すはプロデビュー。
そして武道館。
それまで突っ走って行くぞ!!」


自分自身でも
かなり大きく出たなと思いながら
そう気合の入った声を上げ

他の奴らが「オオッ!!」と
返事を返してくるかと思ったら


「リョウ、こころざし低ない?
それを言うなら東京ドームやろ」

「そうそう、どうせだったら
ドームツアーとかさ」

「あ?
うるせーな、ケンゴ、ケイタ。
まずはビートルズもステージに立った
聖地武道館だろうが。
その後はおいおい考えるよ」

「いやいや、聖地だったら
ウェンブリーアリーナだろ」

「待てやカズマ。
いきなり海外しかもイギリスに飛ぶなや。
俺らの音的にはどっちかって言うと
アメリカよりやろ」

「アメリカだったら俺あそこがいい。
この前DVDでライブ見たじゃん?
ウッドストックの野外の会場」


ついつい我慢できなくなって
俺も会話に参加し出したら
興奮した男連中が
こぞって「オー」と歓声を上げた。


「お前、大きく出たな。
あそこ20万ぐらい観客入ってたぞ」

「Love&Peaceの精神のかけらもない奴が
何いってんねん!!」

「はぁ?お前ドコに目ついてんだよ。
俺なんか
LoveとPeaceの塊じゃねーかよ」


そう俺が輩口調で
ケンゴの言葉に突っかかっていると


「……あっとごめん、西条!」


と慌てたようなケイタの声で
全員ふと我にかえる。

アキがさっきから一言も口にしてないこと
全然気付かなかった。


もしかして呆れてたり?


「バカね」と他人事のように
呟いたユリの声と
笑いを堪えようとして失敗した
タケの咳込む音。