「お前、そうなのか?」


いつの間にか中庭に到着して
背後にしゃがみこんだカズマが
俺の背中に問い掛ける。

とりあえず視線だけで
奴に肯定の返事をして再び前を見る。


……って、何で真希が
んなこと知ってんだよ。
女同士の横の繋がりって怖ぇ。


背中に寒気を感じてたら
眉間にシワを寄せたアキが言った。


「リョウ?
何、リョウの事で怒ってるの?」

「そうよ。
リョウと付き合ってるんでしょう?」


するとアキは少し笑って
意味深に


「さあ、どうだろう」

「な、何その言い方!
人の事ばかにしてんの?
日曜日にデート、してたんでしょ?
ネタはあがってんのよ!」


“ネタ”って
お前は取り調べのデカか?
アキもアキだ
真希をあんま刺激すんなっつーの。


「あなたはさ、
リョウが好きなの?」

「そ、そーよ」

「だったらこんな下らない事してないで
他にやるべき事があるんじゃないの?」

「……え!?」


アキは一歩真希の方に足を進めると
呆れたようにため息を着いた。

そして回りの人間を威圧するような鋭い目。


少し強い風が
アキのストレートの金色の髪と
真希のゆるく巻いた茶色い髪を揺らし

二人の頭の上では新緑が
この緊迫した空気に全く溶け込むことなく
ザワザワと揺らめいていた。