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「――おい、リョウ見てみろよ!
あの子めちゃ可愛い!!」

「あ?」

「何気の抜けた声出してんだよ。
ほらお前も早く参加しろよ!」


春。

澄み切った青が空一面に広がって
うざいぐらいに眩しい日差しが
俺たちを照らしていた。

開け放たれた窓からは
心地よい風が流れ
遠くからは小鳥のさえずりが……

って……ああめんどくせぇ。


そもそも俺は何でこんな朝っぱらから
クソ真面目に学校来てんだよ。


かったるかった始業式はつい昨日の事
この春俺たちは無事二年に進級した。
(これがけっこうギリだった)

んで今日は新学期二日目。
授業のスケジュールはほぼHRのみで
別に真面目に来なくてもいいような一日。

もちろん俺はさぼる予定だった。
今朝の7時35分までは!!

それが何でこんな早朝から
真面目に学校来ちゃってるわけ?


「つーかリョウ聞いてる?
ほらあの茶髪ロングの携帯いじってる子
俺めちゃタイプ」

「…………」

「あっ、あっちの髪クルクルの子も
かわいーなー」


さっきからにやけた顔して
窓の外を見下ろす男の顔を見て
俺の中の何かがぶち切れた。

イラついた感情のまま。
目の前の憎たらしい男の足元を
思いっきり蹴飛ばす。


「テメェさっきからうっせーんだよ!
大事な用があるからって
俺のこと叩き起こして、
こんな下らねーことに
付き合わせてんじゃねーよ!」

「はあ?痛ってーな、このバカ!
新入生チェックの
どこがくだらないんだよ!」

「バカはお前だろ。
いちいち説明するのもめんどくせーぐらい
くだらねえってんだよ!」

「あ〜、お前は何にもわかってない。
男女の出会いはいわば弱肉強食の世界。
先手必勝これセオリー。
わかったか!」

「……わかんねえよ」


今のこいつには何を言っても
話が通じない気がして
早急に会話するのをあきらめた。

かわりに超特大のため息を一つ。