またか、と思い、軽く溜め息。


「お前が期待してるようなことは
何もない」

「そうなの?
親友の彼女を略奪愛なんて
ドロドロしてて素敵って思ったのに。
私は応援してるわよ」

「本当さ、みんなして
俺と西条くっつけたがるの
いい加減にしてほしいんだけど。
そんな甘い関係じゃねーって
手すらつないだことねーし」

「バカね、だからみんな
怪しがってるじゃない」

「……意味わかんねぇ」


話の意図が掴めず
いらついた気持ちでみそ汁を飲む。

いつもより塩辛いし。


「いいリョウ。
アンタ基本的に女にはやさしいし
タイミングさえ会えば寝たりも出来る。
でもそれは不特定多数で
誰も特別にはなれなかった。

それなのに無条件で
隣に置いておく女なんて
今まで居たことなんかなかったじゃない。
軽音部、アンタが誘ったんでしょ?」

「あぁ」

「そこまで執着する女なんて
よっぽどだと思われてるわよ。

それにアンタが音楽バカなのは
みんな承知の事実だけど
その点でも同じ目線でいられるんだから
ある意味驚異よね。
しかもあの顔とスタイル」


ユリの強い口調に
嫌な風が身体の内側を駆け抜けた。

昔の苦い記憶が蘇る。


「もしかして、西条
何かされてたりするのか?」