タケはその言葉に負けないぐらい
熱いパフォーマンスを見せ
観客ををさらに興奮させて。

ミヤも楽しそうに
「タケー、やるじゃーん」と叫んでた。

でもこれで終わる俺等じゃねえだろ?


緊張が解けて余裕の出てきたタケが
ステージ狭しとジャンプをする中
俺は後ろを向いてケンゴと目を合わせ
人差し指をグルグルと回転させる。


それを境にケンゴのドラムのテンポが
どんどん速くなり
俺とカズマの演奏もそれに続く。

そうして元の倍速ほどのスピードになり
だんだんついていけなくなったタケが
悲鳴を上げだした。


「ひでえ、アニキ達!!」

「うっせー!タケ、お前こそ
ステージ上がったこと
後悔してんじゃねーよ」

「って俺も指つりそうなんだけど〜」


とまだまだ余裕そうな表情のカズマが
冗談っぽく叫ぶと観客から爆笑と野次。


「脱落した奴この後ラーメンおごりな」


鬼ケンゴの提案に
再びやる気を取り戻すバカ二人。
っていうかこの二人性格結構似てねぇ?


そんな感じで爆笑と歓声が入り混じる中
ありえねえほどの
超高速スピードで曲が終わると

ステージにはヘロヘロになって
ぶっ倒れた屍が一人。

汗をびっしょりかき、肩で息をして
ボーゼンと天井を見つめるそいつに
俺はニヤケながら近づいた。


「楽しかったなタケ。
また一緒にやろうな」


そう言って手を伸ばすと
目を輝かせ、一呼吸おいて
「ういっす」とうれしそうに返事をして
俺の手をつかんで一気に立ち上がった。


さっきのといいこれといい
アドリブしまくりだし
実際客に聞かせられたもんじゃねえけど

気の会う仲間と一緒に演奏するのは
俺の中で最上級に贅沢なことで
“生きてる”って
実感する瞬間でもあるんだ。


ケイが死んだって事実。
もし一人で知ったら
俺はこんな風に立ち直れなかっただろう。

やっぱりこいつらと一緒にいるのが
俺には一番自然で
ありのままの自分でいられるんだ。