その日は雨だった。


昨夜から降った雨で、せっかく開き始めた花びらが散ってしまうかも知れない。


心配になった私は、その日は散歩じゃなくて、小走りで優咲に会いに行った。


私の心配は杞憂に終わった。


優咲は雨に負けずにしっかりと花びらを握り締めるかのように我慢していた。


「頑張ったね」


私はねぎらいの言葉をかけて、優咲のその体を優しく撫でてあげた。


「私に世界で一番の桜を見せてね。約束だよ」


私のわがままを、優咲はその大きな体で優しく受け止める。