相原は二人を自分の席側の椅子に座るよう促した。

嵐山の対面に相原が座っていたので、薫が倫の対面に座った。その隣に樫野が座る。

倫の額から汗が流れる。

「あのな、こちらのお二人の大学で理系学生を対象に高校生と交流合宿を毎年企画しているらしいんだ。

で、今年はうちにお声をかけてくださったわけだが・・・。

ええと、小山田さんでしたっけ、あなたが九条とお知り合いだとかで。」

倫は小さくはい、と答えた。

「九条君の科学の才能は、私たちの間でも有名でして、そこで彼女が九条君と知り合いだということで、今回合宿に参加していただけないかと一緒にお願いにきたのです。」

嵐山が倫の代わりに答える。

相原は、ふむ、そうですかと頷き、薫と樫野に向かって聞いた。

「どうだ?九条。お前が参加してみたいってなら、教頭先生たちに掛け合ってみるけど。」

薫は倫をじっと見つめていた。

倫はそれを感じていたが、顔をあげられないでいた。

「僕は・・・参加したいですね。ぜひ。」

薫が落ち着いた声で答えた。

倫も驚いたが、相原と嵐山も驚いていた。

「本当に参加してくれるんですか?」

嵐山は断られると思っていたらしかった。

薫は嵐山の顔を見るとにこりと笑った。

「はい。友人にも参加してもらうよう募ってみます。」

相原がほえーと間抜けな声を出した。

「お前、忙しいんじゃないのか?」
「大丈夫です。でも、条件が。」

薫以外の4人がその言葉にぴくりと反応した。

(条件?)

倫は薫の言葉を待った。

「言ってみてください。可能であればお応えします。」

嵐山が身を乗り出した。

薫は倫に視線を戻して言った。

「小山田さんが参加してくれるのが条件です。」

倫は思わず顔を上げた。

薫の黒い瞳と目が合う。

それは燃えるように輝いていた。
倫への想いが溢れている。