「ねえ、ちょっとおいでよ。いいもの見せてあげる。」

そう言って廊下の一番奥の部屋に倫を招いた。

真っ暗で、何も見えない。

しかし、薫は見えているのか、倫の手を引いてソファに座らせた。

パチン、とスイッチが入る音がする。

とたんに部屋中が無数の小さい光で満たされた。

「これ・・・」
「すごいだろ?祖父が作ったプラネタリウムの装置、に俺が改良を加えたんだ。

流れ星が流れるんだよ。」

薫が言い終わると同時に、光が線をすっと描いた。

「素敵・・・」

倫はすっかり見入って、ため息をついた。

しばらく二人でソファに座って手作りの夜空を見上げた。

薫が倫の手をずっと握っていたことに気がついたのは、だいぶ後だった。

倫はさりげなく手を離した。

「・・・ね、お祖父さまってどんな人だった?」

倫は不自然にならないよう、気をつけて質問した。

「どんな人?そうだな・・・父や伯父さんには厳しかったけど、俺には優しかった。

科学の話をいつも聞かせてくれて、小さい時から一緒に庭で実験したり、山に植物を見につれてってくれた。倫ちゃんと同じ・・・俺も両親ていうより、祖父に育ててもらったようなものかな。」

そう・・・と、倫は再び天井を見上げた。

祖父を慕ってる薫にとてもじゃないが、自分の父があなたのお祖父さまよとは言えなかった。

倫はこっそり薫の顔を見ようと、隣に目を向けると、薫がこちらを見つめていた。

倫はどきりとした。目を逸らしたかったが、薫の瞳に引き付けられ、逸らせなかった。

「もう、会えないかと思ってたから・・・。今、隣にいるのが信じられないな。」