「倫・・・ちゃん?」

その時頭上から声が聞こえた。

倫がはっとして顔を上げると、制服姿の九条薫が立ってた。

「どうして・・・こんなところに・・・」

倫がそこにいることに驚いていたが、倫が泣いていることに気がつくと、跪き、倫の涙を指でぬぐった。

「何があったの?」

優しい声で問いかける。

倫は胸が締め付けられて、薫にすがりつきそうになるのを必死で堪えた。

黙って白衣の裾で顔を隠して泣いた。

薫は黙って見つめた。

薫が側にいるだけで何て落ち着くのだろう。倫は落ち着きを取り戻し、顔を上げた。

「ごめん・・・何でもないの。」

薫がクスっと笑い、倫の頬に手を滑らせた。

「こんなに目を晴らして、何でもない、か。パンダみたいだ。」

倫は目の前にいる薫と自分が血が繋がってるということがまるで信じられなかった。

こんなに胸が苦しいというのに・・・。