ラブ・スーパーノヴァ

倫は反射的に手を振り払った。

顔が強張り、蒼白になったが、平静を保とうと静かに答えた。

「行きません。実験中ですので、失礼します。」

そう言って実験室に戻ろうとした。実際に倫は実験の最中で、白衣のままだった。

「申し訳ございません。小山田様には拒否できないのです。失礼。」

突然男が倫を肩に担ぎ上げた。

「!!」

倫は驚いて暴れた。

「離せぇ!やめろ!誘拐ー!!」

周りの人たちが驚いて倫たちを見たが、ただ見ているだけで、助けてくれる様子は無かった。

男の力は倫が暴れたくらいではどうにもならない程強く、そのまま車に乗せられてしまった。

「・・・ちょっと、コレ、本当に誘拐よ・・・。警察呼ぶから!」

男は運転席に乗り込み、倫の言うことは無視し、車を発進させた。

倫は携帯を探したが、実験室に忘れてきてしまっていたのに気がつき、更に頭にきて怒鳴った。

「あんた達金持ちは本当に何やってもいいって言うの!?降ろしてよ!」

倫は車のドアをがちゃがちゃと開けようとした。

男は全く話さない。任務さえ遂行すればいいのだという雰囲気が伝わってくる。

「~~~~~っ!」

倫は今ほど九条の家に行きたくない時はないというのに、なぜこうなってしまうのだろうと頭を抱えた。

あれ・・・でも・・・。

いつもの九条薫が連れてくる運転手ではないことに気がつき、倫は妙な胸騒ぎがした。

薫が呼んだのではないのだろうか・・・。

倫は薫のことを考えないようにして過ごしてきた。今会っても辛いだけだ。会いたくない。