ラブ・スーパーノヴァ

「倫~!この前はほんとありがと!!」

圭子がご機嫌な様子で倫に声をかけてきたが、倫の顔を見て目を丸くした。

「ゲ・・・何、その目」

倫は泣きっぱなしで晴れた目を手でさっと隠した。

「ナンデモナイ・・・」
「やだ、まさか九条様と喧嘩?だめよ~あんな極上モノなかなか見つからないんだからァ」

倫は圭子の様子から、例の男性とうまくいったのだろうと推測した。

「んふ。あの人、あの声かけてきた人いるじゃない?お医者サマだったのよ~。

お父様が開業なさって、すごい大きい病院みたいなの。今度食事するんだあ~。」

もう笑いが止まらないといった様子である。

倫は良かったね、と言って圭子を睨んだ。

「なによぉ。喜びなさいよ。・・・しかし、その目ひどいわね。冷やした方がいいわよ。」

倫は圭子のテンションに付き合うのも疲れ、そうすると言って、圭子と別れてトイレに向かった。

鏡を見ると、確かにひどい顔をしている。
まぶただけでなく、目のまわりが赤く腫れ、パンダのようだった。

水でぬらしたハンカチで目を抑える。

だいぶ落ち着きをとりもどしたのだが、ふとした瞬間に涙が出てくるのだ。

中庭のベンチでハンカチを乗せたまま、少しうとうとしてしまった。

「小山田倫様ですね?」

突然低い男の声がした。

倫は驚いてハンカチを取り、起き上がった。

「すみませんが、今からご同行願えませんか。」

目の前に黒いスーツに黒いネクタイで身を包んだ冷たい表情の男性が立っていた。

「あなた・・・誰?」

倫は訝しげに男を睨んだ。

「九条家の使いの者です。時間があまりありません、どうぞこちらへ。」

そう言って倫の腕を取った。