「それからはちょくちょく家にもくるようになってねえ。幸子も優しい子だったし、二人とも性格が似て、のんびりしててお似合いだったんだよ。

あたしも嬉しくて、早く結婚しろっていつも言ってたんだけどねえ・・・。」

キヨはため息をつき、表情を暗くした。

「幸子はとある会社の事務仕事をしててね。

やっと見つけた働き口だったから、そりゃあ、真面目に働いてたよ。熱があったって絶対休まなかった。

でもね、ある日・・・帰りが遅くて心配して駅まで迎えに行ったら、駅の待合室で暗い顔して座ってるんだ。

どうしたって聞いても何も言わない。

仕方なく家に連れて帰ったら、会社に行きたくないって言うんだよ。

今までそんなこと一度も言ったことなかったから驚いてね。

何か会社であったのかっていくら聞いても何も言わない。

じゃあ、明日は休みなって言ったんだけど、結局次の日もいつも通り出勤してった。

だから、あたしも大丈夫なんだと思ってそれっきりそのことは忘れてたんだよ。」

倫はキヨを見つめた。

しかし、キヨは倫の顔を見ることなく、訥々と話した。

「それからもずっといつも通りだった。

でも今思うとおかしいと思うことは少しずつあったんだねえ。

食が細くなったり、私の前で着替えなくなったり・・・。

母親失格だよ。

いよいよ幸子の腹がでかくなってきてからやっと気がついたんだから。」

倫はどきりとした。