家にどうやって帰ったのか、倫は覚えていなかった。

キヨは眠っていたようだが、物音で目を覚まし、寝室を出ると、玄関で呆然と立ち尽くす倫の姿を見つけ驚いた。

「倫・・・どうしたんだい!?」

羽織っていたストールを倫の肩にかける。

「キヨちゃん・・・話して・・・」

倫はうな垂れて言った。

キヨが訝しげに倫を見つめて言った。

「話すって・・・何をだい?」

覚悟を決めて、倫はキヨの目を見つめて言った。

「なんで・・・なんで、九条薫はだめなのか、話して!」

倫の思いつめた瞳に、キヨは驚いていたが、徐々に事態を把握し、倫の手を強く握った。

「倫・・・あんた・・・」

「私の・・・私のお父さんと、関係があるの?・・・そうなんでしょ?」

キヨはその言葉には答えなかった。

代わりに倫に尋ねた。

「覚悟は決まってるんだね?」

自分の出生について聞く覚悟はできたかという意味だと、倫はすぐ理解した。

倫は黙って頷いた。

「そうかい・・・。話すからには、全て正直に話すよ。お前さんには耐えられないかもしれない。それでも、真実を受け入れるしかないよ。いいかい?」

倫はもう一度頷いた。

キヨが全身で緊張していることが痛いくらい伝わってきた。

一体何が伝えられるのか、倫は怖かったが、もう後には戻れなかった。

九条薫が好きだ。それを認めてしまった。

もう、後には戻れない・・・。