「私・・・帰る。」
倫が薫の前を通り抜けようとすると、薫は力ずくで倫をひきよせた。
「だめだ。」
薫が倫の腰に手を回す。長身の薫だが、手すりに腰掛けているので、ちょうど倫と同じ目線になる。
「やっと目を合わせてくれた」
倫はとうとう薫の瞳に捕らえれててしまった。
漆黒の髪の隙間から覗く、漆黒の瞳。
月の光がそれらを美しくきらめかせ、薫の白い頬にまつ毛の影を落とした。
なんて綺麗なんだろう。
倫は胸が苦しくなって言葉が出てこなかった。
薫も何も言わなかった。
時が止まったような気がした。
「綺麗だ・・・」
薫が独り言のように呟いた。
綺麗?それはあなたの方よ、と倫は心の中で呟いた。
薫はそっと指で倫の頬をなぞった。
「心が震えるって・・・こういうことなんだな・・・。」
倫はどういう意味かわからなかった。
「君に・・・触れたくて仕方ないのに、触れると苦しい・・・。こんな気持ち初めてだ。・・・信じる?」
倫は薫の真摯な眼差しから、その言葉を信じることができたが、出てきた言葉は逆のことだった。
「信じない・・・」
倫が薫の前を通り抜けようとすると、薫は力ずくで倫をひきよせた。
「だめだ。」
薫が倫の腰に手を回す。長身の薫だが、手すりに腰掛けているので、ちょうど倫と同じ目線になる。
「やっと目を合わせてくれた」
倫はとうとう薫の瞳に捕らえれててしまった。
漆黒の髪の隙間から覗く、漆黒の瞳。
月の光がそれらを美しくきらめかせ、薫の白い頬にまつ毛の影を落とした。
なんて綺麗なんだろう。
倫は胸が苦しくなって言葉が出てこなかった。
薫も何も言わなかった。
時が止まったような気がした。
「綺麗だ・・・」
薫が独り言のように呟いた。
綺麗?それはあなたの方よ、と倫は心の中で呟いた。
薫はそっと指で倫の頬をなぞった。
「心が震えるって・・・こういうことなんだな・・・。」
倫はどういう意味かわからなかった。
「君に・・・触れたくて仕方ないのに、触れると苦しい・・・。こんな気持ち初めてだ。・・・信じる?」
倫は薫の真摯な眼差しから、その言葉を信じることができたが、出てきた言葉は逆のことだった。
「信じない・・・」

