薫がこちらを向いた瞬間、目が合った。
倫の鼓動が早くなる。
薫は話していた男性に軽く頭を下げると、二人に向かって歩いてきた。
「来てくれてありがとう」
薫が嬉しそうに言った。そして、倫の全身を眺めると、倫の耳に顔を寄せて囁いた。
「可愛いね。とても似合ってる。」
倫はまたもや顔をあげることができないでいた。照れくさかっただけではなかった。
薫の姿を見た途端に、自分がどれだけ薫に会いたかったのか、痛感したからである。
「何か飲みますか?」薫が圭子に尋ねた。
「じゃあ、ワインもらおうかな。」
圭子は緊張をほぐすために赤ワインを頼んだ。
「倫ちゃんは?」薫がうつむいている倫の顔を覗き込んで尋ねた。
「・・・いらない。」
倫はやっとの思いで答えた。
本当に何も飲みたくなかったのだが、すねた言い方になってしまったかもしれないと思った。
薫は何か言おうとしたが、圭子の手前だったからか、諦め、ウェイターからワインを受け取って圭子に渡した。
「薫さん、お父様がお呼びよ」
その時突然、和服姿の女性が薫の背後から声をかけた。
黒いウェーブがかった髪を綺麗にまとめ、鼈甲のかんざしで留めている。
薄紫の着物も高そうだったが、帯と帯止めが素人目でもかなり高級であることがわかった。
倫の鼓動が早くなる。
薫は話していた男性に軽く頭を下げると、二人に向かって歩いてきた。
「来てくれてありがとう」
薫が嬉しそうに言った。そして、倫の全身を眺めると、倫の耳に顔を寄せて囁いた。
「可愛いね。とても似合ってる。」
倫はまたもや顔をあげることができないでいた。照れくさかっただけではなかった。
薫の姿を見た途端に、自分がどれだけ薫に会いたかったのか、痛感したからである。
「何か飲みますか?」薫が圭子に尋ねた。
「じゃあ、ワインもらおうかな。」
圭子は緊張をほぐすために赤ワインを頼んだ。
「倫ちゃんは?」薫がうつむいている倫の顔を覗き込んで尋ねた。
「・・・いらない。」
倫はやっとの思いで答えた。
本当に何も飲みたくなかったのだが、すねた言い方になってしまったかもしれないと思った。
薫は何か言おうとしたが、圭子の手前だったからか、諦め、ウェイターからワインを受け取って圭子に渡した。
「薫さん、お父様がお呼びよ」
その時突然、和服姿の女性が薫の背後から声をかけた。
黒いウェーブがかった髪を綺麗にまとめ、鼈甲のかんざしで留めている。
薄紫の着物も高そうだったが、帯と帯止めが素人目でもかなり高級であることがわかった。

