小山田倫、21歳。

都内の私立大学に奨学生として通っており、授業料は全額免除されていた。

’キヨちゃん’とは彼女と一緒に暮らす祖母のことで、二人は倫のバイト代とキヨの年金と少しの家賃収入で質素な生活をしていた。

母親は死んで、父親はもともといなかった
母親が3歳の時に死んでから、ずっと倫を育ててくれたキヨだが、

昨年階段から落ちた際に足と腰を骨折し、治癒したものの立つのがつらくなり、昔からやっていたもんじゃ屋をたたみ、今はその部分を人に貸している。

キヨは、太平洋戦争後にアメリカの軍人と恋仲になり、倫の母である幸子を産んだ。

しかし、その軍人には故郷に既に家族があり、幸子を抱くこともなくアメリカに帰った。

戦後の厳しい時代を、シングルマザーで、かつアメリカ人との子供を産んだキヨはそうとう苦労をしたらしかったが、元来の負けん気で乗り越えてきた。

今でもパワフルなおばあちゃんで、倫はキヨが大好きだった。

倫は4分の1はアメリカの血が入っていることになる。

目や髪はうっすらと茶色で、髪はくせ毛で、伸ばせば綺麗な髪にると思われるのだが、長いのは邪魔だと、いつも耳の下あたりになるようキヨに切ってもらっていた。

クォーターだからか、目が大きく、まつげが長い。
鼻筋も通っており、一見美人に見えるが、本人は自覚もなく、化粧も全くしなかった。

圭子に、背も高いしモデルになれば良いのにとよく言われるが、そういったたぐいには全く興味がなかった。