ラブ・スーパーノヴァ

そう決意した次の日から、倫は急遽教授に頼まれた仕事で忙しくかけまわる日々がつづいた。来週大学で行われるイベントの手伝いだった。

「小山田、大丈夫か?寝てないんじゃねーのか?」

ゼミの先輩の嵐山が倫に声をかける。
倫はバイトと講義と手伝いで疲れきっていた。嵐山がコーヒーをおごってやるから少し休めと倫を中庭に誘った。

嵐山は北関東出身の、レスラーのような体つきをしており、髪もボサボサ、服装も全く気にしないでいつもぼろぼろのジーパンに薄汚れたシャツに白衣で過ごしていた。

実験が大好きで、いつも実験室にいたが、今日は珍しく外に出てきていた。

「嵐山先輩・・・本当は先輩の仕事だったらしいじゃないですか・・・」

倫はクマで縁取られた目で睨みなが言った。

「ははは!悪かったな!俺ぁ、今、1日中つきっきりの実験してっから、ダメなんだわ。」

嵐山は人懐っこい笑顔ですまんすまんと倫の頭をがしがしなでた。

倫は一時この男のことを好きだった時期があったが、嵐山にはもう何年もつきあってる彼女がおり、入り込む隙がないとわかると、すぐに諦めた。

「そういやー、お前、この前、九条のガキと歩いてたなあ。実験室から見えたぞ。」

倫はどきりとした。

「先輩、なんであの子が九条だって知ってるんですか??」

嵐山はコーヒーをずずっと啜った。

「なんでって、科学雑誌でよくみかけるからよ。高校生の科学論文コンクールで賞も何回もとってるしなあ。海外の高校生達とディベート合戦して勝ったりな。
九条っつったらあれだろ、公家のお家柄だから覚えてた。顔も抜群に’美人’だしな。」

倫はショックだった。知らなかった・・・。やはり只者ではなかったのだ。

「どこで知り合ったんだ?今度紹介しろよ。あいつ、センスあるぞ。うちの大学来ねーかな。」

どうりであれだけの知識があるはずだ。それに公家の家系というのも、家の様子からして頷ける。
全てにおいてレベルが違うはずだ。